ノーベル賞制定の日
きょうの本棚
①「ノーベルと爆薬」トレバー・I・ウィリアムズ/著 玉川大学出版部(289:個人伝記)
②「ノーベル平和賞で世の中がわかる」池上彰/著 マガジンハウス(319:外交)
③「ノーベル賞で読む現代経済学」 トーマス・カリアー/著 筑摩書房(331:経済学)
④「知っていそうで知らないノーベル賞の話」 北尾利夫/著 平凡社(377:大学)
⑤「SCIENCE AND ME わたしの科学 : ノーベル物理学化学生理学・医学賞13人の発見と生きかた」アリ・ウィンター/文 ミカエル・エル・ファティ/絵 かもがわ出版(402:科学史)
⑥「世にも美しい数学入門」 藤原正彦, 小川洋子 著 筑摩書房(410:数学)
⑦「ノーベル文学賞を読む : ガルシア=マルケスからカズオ・イシグロまで」橋本陽介/著 KADOKAWA(902:文学史)
⑧「ノーベルの遺志 上下」リザ・マークルンド 著 東京創元社(文学・小説)
⑨「マリー・キュリー」清水あゆこ/文 曽根璃奈/作画 斎藤孝/監修ポプラ社(絵本)
きょうは何の日? コラム
「ノーベル賞制定の日」
1895年のこの日、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルは、自らの発明したダイナマイトで得た富を人類に貢献した人に与えたいという遺言を書きました。そして、彼の死後、ノーベル財団が設立され、1901年のこの日、ノーベル賞の第1回受賞式が行われました。
物理学・化学・生理学医学・文学・平和事業の5分野に貢献した人に贈られています。
現在では、毎年ノーベルの命日の12月10日に、平和賞はノルウェーの首都オスロで、その他の賞はスウェーデンの首都ストックホルムで授賞式が行われています。受賞者には、賞金の小切手・賞状・メダルがそれぞれ贈られます。
「経済学賞」
ノーベルの遺言にはなかった経済学賞は、1969年に新設されました。他の賞は1901年ですので半世紀以上経ってから創設されたことになります。経済学賞を直訳すると「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」となります。他の賞と同様に、スウェーデンの王立科学アカデミーが受賞者の選考に当たっているので、「ノーベル賞」に見えますが、ノーベル財団は、経済学賞の選考プロセスの中で、「Not a Nobel Prize」と注意を喚起しています。
とはいえ、経済学賞の創設からほぼ半世紀、経済学は科学としても発展してきました。そして、90年代から現在にいたるまで、ノーベル経済学賞はその範囲を広げ、心理学、社会学など周辺領域の優れた研究にも与えられるようになり、総合的人間科学が対象となってきました。
「数学賞がない理由」
科学の発展に数学は大きな役割を果てしていますが、ノーベル賞には「数学賞」はありません。なぜなのでしょうか?
諸説ありますが、醜聞的なものとしてノーベルがある数学者を嫌っていたから数学をノーベル賞から外したという説があります。ノーベルと同国人にミッタク・レフラーという数学者がいました。なぜ、仲が悪かったからというとノーベルが彼へ嫉妬していたからだというのです。
あるロシア人の美人数学者は才能があるのに女性というだけで、活躍の場が得られませんでした。そんななかで手を差し伸べたのがスウェーデンのレフラーです。彼と知り合いスウェーデンに職を得た彼女は彼の手引きで、ストックホルムの社交界にデビューします。彼女は瞬く間に男たちの注目を浴び、言い寄られることになります。なかでも、とりわけ熱をあげていたと言われるのが、ノーベルその人だったといいます。
ところが自分が思いを寄せる女性の傍らにはいつも、あのレフラーがいたのです。ノーベルが彼に深い嫉妬を抱いていたとしても、不思議ではないでしょう。
ちなみにレフラーは複素解析における「ミッタク・レフラーの定理」で著名な数学者。ノーベルが危ぶんだ通り、数学賞ができれば、受賞の可能性は十分にありました。だからこそ、数学賞の創設はしたくなかったのかもしれません。
「キュリー夫人」
ノーベル賞といえばマリー・キュリーでしょう。キュリー夫人の名前の方が通りがいいですが、当然、キュリーは夫の名前です。彼女自身はマリー・キュリーと個人名で呼びたいところです。もっとも、マリーはフランス風の発音なので、マリアといったほうがいいかもしれません。
現代でもガラスの天井という女性の出世などでの壁が存在するといわれます。彼女の生きた時代にはそれが公然と存在していました。そんななかで苦学の末に2度も受賞したばかりか夫や娘までノーベル賞を受賞しているのですから、まさにノーベル賞の申し子といっていいでしょう。
それでは、また次回。
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司書のビブリオ9です。
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