うるしの日
きょうの本棚
①「縄文の漆」 岡村道雄 同成社(210:日本史)
②「宮本常一とあるいた昭和の日本〈23〉漆・柿渋と木工」田村善次郎、宮本千晴監修 農山漁村文化協会(382:風俗史)
③「魔法の薬 : マジックポーション」 秦野啓 司馬炳介 新紀元社(499:薬学)
④「うるしの科学」 小川俊夫 共立出版(572:化学工業・油脂類)
⑤「漆学:植生、文化から有機化学まで」 宮越哲雄 明治大学出版会(572:化学工業・油脂類)
⑥「金継ぎ一年生 : 本漆で、やきもの、ガラス、漆器まで直します」山中俊彦 監修(752:漆工芸)
⑦「漆 塗師物語」 赤木明登 文藝春秋(752:漆工芸)
⑧「吉祥寺うつわ処 漆芸家・棗芽清乃の事件手帖」 穂波晴野 マイクロマガジン社(913:日本文学・小説)
⑨「うるしの器」 瀬戸山玄/文と写真 岩崎書店(絵本)(752:漆工芸)
きょうは何の日? コラム
「うるしの日」
この日がうるしの日になった由来。
漆は古来から用いられていましたが、その製法は完成されてはいませんでした。文徳天皇の第一皇子・惟喬親王は、そのことを憂い自ら京の嵐山の法輪寺に参籠し、その満願の日に「漆」の製法を菩薩より伝授され国内各地に広めたといいます。この日は漆工の関係者の祭日となり、親方が職人に酒や菓子などを配り労をねぎらいました。
「日本の漆器」
漆塗りは、ウルシの樹液から精製される漆を器物の表面に塗り重ね、様々な加飾を施す、東洋独特の伝統的技法です。日本では北海道垣ノ島遺跡から約9000年前の漆塗りの副葬品が出土しています。この発見により、日本が縄文時代早期から漆工芸技術を持っていたことが判明しました。世界でも最古だそうです。平安時代以降になると漆器の装飾技法「蒔絵」が開発され、安土桃山時代には南蛮貿易で多くの日本の漆器が輸出され、ヨーロッパの人々を魅了しました。そして江戸時代にかけて技法と美術的価値が大きく発展し、漆で極めて高度に装飾された印籠・刀剣の鞘・甲冑などが製作され武家や町人の間で流行しました。
「japan」
日本の漆器は中世から欧州で高名であり、日本語に由来する世界共通の漆の用語が複数あります。例えばウルシの木に含まれている物質「ウルシオール」は、1906年に「漆」から命名した言葉が世界化したものです。また磁器を「china」と表記することがあるように、日本の漆器に限らず漆器を「japan」と表記することがあります。しかし、日本の漆器の模倣品(ジャパニング)の意味もあるため、英米の英語辞典の「japan」欄に「漆」、「漆器」の意味は載っていないそうです。
「輪島塗」
日本各地には多くの漆器が存在しています。輪島塗はその中でももっとも有名なもののひとつでしょう。石川県輪島市で生産される漆器なので「輪島塗」といいます。輪島での漆器の生産は古く、同じ能登半島の七尾市の遺跡からは6800年前の漆製品が発見されています。輪島では平安時代の遺構で漆製品が発掘されています。現在のような輪島塗の技術が確立したのは江戸時代前期。能登半島北端にある輪島は北前船などの寄港地であり、この時期には既に海運の利を生かして販路を拡大していました。また陸路での行商もおこなわれており、堅牢さが評判の輪島塗は日本各地で使われました。
「金継ぎ」
金継ぎ師によって陶磁器の破損部分を漆を用いて修繕する技法を金継ぎといいます。古来から行われる日本の伝統工芸の一つです。漆を用いて修繕を行う技術自体、古くは縄文土器にも存在していました。金継ぎはウルシの木の樹液を精製して作られる天然の接着剤である漆を使用して複数の工程で数週間かけて行われます。漆による接着の強度は長い歴史が証明しており、あらゆる接着剤の中でも非常に優秀であるとされています。
それでは、また次回。
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司書のビブリオ9です。
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