世界郵便の日
きょうの本棚
①「ガルシアへの手紙」エルバート・ハバード, アンドリュー・S・ローワン KADOKAWA(159:人生訓)
米西戦争時、キューバのリーダー・ガルシアへの手紙を託されたローワンは、相手の居場所もわからぬまま飛び出した。その4週間後、かれは手紙を届けて無事生還し自国に勝利をもたらしました。百年以上にわたり支持され続けた自己啓発本。
②「野戦郵便から読み解く「ふつうのドイツ兵」」小野寺拓也 山川出版社(234:ドイツ史)
敗色濃厚な第二次大戦末期。それにも関わらず、なぜ、ドイツ兵たちは戦い続けたのか。兵士の手紙5477通からその心のうちに迫ります。
③「明治維新の理念をカタチにした前島密の構想力」 加来耕三つちや書店(289:伝記)
前島密は郵便の創業者としてその名を不動のものとしていますが、郵便関連のほか、江戸遷都、国字の改良、海運、新聞、電信・電話、鉄道、教育、保健など、その功績は多岐にわたります。
④「日本郵便創業の歴史」藪内吉彦 明石書店(693:郵便)
日本の郵便事業はどのよう始まったのか、江戸時代以来の飛脚問屋の活動と、明治時代の郵便事業への移行過程を解き明かします。
⑤「トゥルン・ウント・タクシス その郵便と企業の歴史」ヴォルフガング ベーリンガー 三元社(693:郵便)
中欧に最初の国際郵便路線を創設したフランツ・フォン・タクシスは、神聖ローマ皇帝の書信を輸送するところから国際郵便システムを構築していきました。タクシスの郵便とはいかなるものだったのでしょうか。
⑥「切手に秘められた愛」黛信彦 新風舎(913:日本文学・小説)
明治11年、里登は日本の郵便制度を創設した政府高官の前島密と出会う。郵便制度に不満を持つ飛脚たちに襲われた彼を匿った里登は、献身的に尽くすうちに子を身ごもってしまったが。一円切手の肖像に秘められた男と女の一期一会の愛を描く。
⑦「幻想郵便局」堀川アサコ 講談社(913:日本文学・小説)
アルバイト先は、山の上、ぽつんとたたずむ不思議な郵便局。そこで出会った不思議な人々と不思議な世界とは。
⑧「郵便局」チャールズ・ブコウスキー 光文社(933:英米文学・小説)
気楽な気持ちで試験を受けて代用の郵便配達人になってみたものの仕事はむちゃくちゃキツい。
正職員の連中はひどい雨の日や配達量が多い日には欠勤しちまうし、ボスは意地悪だ。
それでも働き、飲んだくれ、女性と過ごす、そんな無頼生活を赤裸々に描いた自伝的長篇。
⑨「郵便屋さんの話」カレル・チャペック/作 藤本将/画 フェリシモ(絵本)
ひとりの郵便屋さんが自分の仕事にやる気をなくしていました。同僚が帰ってしまった、ある夜更け。郵便局員の姿をした小人を見つけて。
きょうは何の日? コラム
「世界郵便の日」
1874年のこの日、世界をひとつの郵便地域にするため万国郵便連合が発足しました。
これによって、国内郵便も国際郵便も、両方とも同じ扱いになり、ほぼ全世界に固定料金に近い形で郵便が送れるようになりました。それを記念して制定された国際デーです。
「日本郵便の父」
日本郵便の父といえば、教科書でもおなじみ「前島密」ですね。
明治初期に日本に郵便の仕組みを築いたのはいうまでもありませんが実は他にもいろいろな事業にかかわっている。主なものだけでも「鉄道敷設の立案」「新聞事業の育成」「郵便貯金の開始」「電話の開始」などなど、その功績は多岐にわたります。そのほかにも漢字廃止を建言したり、東京(江戸)への遷都を建言したりしています。
「駅伝」
遠隔地との通信の仕組みは世界各地に存在していましたが、それはあくまで国家が国内外の情報を迅速に収集するための手段で、その主要な手段は駅伝でした。古代ペルシアでは「王の道」とよばれる幹線道路に一日の行程ごとに駅がおかれて駅から駅へと使者が往来することで情報を伝達していました。駅伝リレーはこれをモデルにしています。たすきのかわりに情報を受け渡してゴールを目指していたのです。大きければ大きい国ほど必要度が増します。世界最大の帝国であるモンゴル帝国にはジャムチとよばれる駅伝がありました。
「近代郵便の祖」
近代郵便の祖はタシス家となるようです。
もともと飛脚問屋の最有力者として、イタリア全土に宿駅や配達人を配置した郵便経路を建設していたタシス家(ドイツ風にいうとタクシス家)は神聖ローマ帝国(ドイツ)皇帝に召し抱えられて帝国内の郵便路線を整備し、ヨーロッパ全域を対象に郵便事業を行うようになりました。これを帝国郵便といいます。
神聖ローマ帝国は理念的には古代ローマ帝国の継承国家でした。そのため神聖ローマ帝国はローマのあるイタリアを領域とすることにこだわっていましたが、イタリアに多くの都市国家や教皇領があり帝国の力はなかなかおよびません。イタリアにちょっかいをだすうちに本国への影響力は低下していくという本末転倒な事態を招き、これが神聖ローマ帝国を神聖でもなくローマ的でも帝国でもないといわしめる原因となります。
しかし、神聖ローマ皇帝家であるハプスブルク家は婚姻政策によってスペイン王家を継承してヨーロッパに巨大な領域を展開するにいたります。タシス家はその帝国郵便長官となりほぼヨーロッパ全域を配達対象にしました。この帝国郵便をもとに万国郵便連合が発足したのです。
ちなみに、郵便を司ったタシス家が角笛を使っていたので、いまでもドイツ郵便のマークになっています。
「ペニー・ブラック」
郵便切手のアイデアは19世紀初頭から様々な国で提案されていましたが、現在と同じ郵便切手を利用した制度が開始されたのは1840年のイギリスとなります。初めて郵便切手は当時のイギリスの国家元首であったヴィクトリア女王の肖像が使用されていました。最初の1ペニー切手は黒色で印刷されていたため「ペニー・ブラック」という愛称で呼ばれました。ちなみに、のちに成立した万国郵便連合は、国際郵便における郵便物の交換を円滑に行うため、切手には発行国の国名を明記するようにしましたが、イギリスに限って、世界最初の切手発行国であることに敬意を表し、イギリスの君主のシルエットを国名表記の代わりとすることを許しているそうです。
それでは、また次回。
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