「くじらの日」
きょうの本棚
①「日本の鯨食文化」小松正之 祥伝社(383:衣食住習俗)
鯨を食べたことはありますか。
かつては給食でも鯨肉が供されていましたが、商業捕鯨中止などもあり激減し日本人にとって馴染みがなくなっていきました。
日本では古来、鯨の皮も内臓も軟骨も、一頭余すことなく利用する職人文化がありました。
②「歩行するクジラ」J.G.M・シューウィセン 東海大学出版部(457:古生物学)
クジラは哺乳類。ということは陸上で誕生したはずです。
つまりクジラの先祖は、ふるさとである陸上の生活を捨て、水中での生活を選んだことになります。なぜなのでしょうか。
古生物学と分子生物学を駆使して解き明かします。
③「海獣学者、クジラを解剖する」田島木綿子 山と渓谷社(489:哺乳類)
日本の海岸には年間300匹のクジラやイルカが打ち上げられるそうです。
そういったクジラやイルカを電話一本で、海岸に赴き解剖によって死因を探る研究者がいます。
そんな日本一クジラを解剖してきた研究者が七転八倒の毎日とともに綴る科学エッセイ。
④「クジラの進化」水口博也/著・小田隆/イラスト 講談社(489:哺乳類)(絵本)
4本足で歩いていた「パキケタス」
歩くクジラの名前をもつ「アンブロケタス」
巨大な爬虫類のような「バシロサウルス」
だれも見たことがない絶滅したクジラたちが美しいイラストで描かれる。5000万年のクジラたちの進化の旅を目撃しましょう。
⑤「白鯨との戦い」ナサニエル・フィルブリック 集英社(557:航海)
世界的名著メルヴィルの「白鯨」。そのもとになった海難事故を描くノンフィクション。
⑥「クジラコンプレックス」石井敦 東京書籍(664:漁業各論)
いま、鯨といって問題となっているのは捕鯨ではないでしょうか。
人とクジラはどう関わってきたのか。
捕鯨は日本の文化なのか。
調査捕鯨とは何か世界はどう見ているのか。
⑦「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ 中央公論社(913:日本文学・小説)
クジラがタイトルの小説でまっさきに思いついたのが、この作品です。
作中にクジラがでてくるわけではないようです。
なんでも52ヘルツの周波数で鳴くクジラは他のクジラたちが聞き取れないそうです。
つまり、そのクジラは世界一孤独なクジラということになります。そういう意味がタイトルにこめられているようです。
⑧「島とクジラと女をめぐる断片」 アントニオ・タブッキ 河出書房新社(973:イタリア文学・小説)
滅びゆくクジラと捕鯨手たちの歴史的考察、ユーモラスなスケッチなど、夢とうつつの間を漂う島々の物語(青土社1995年刊の再刊)
アントニオ・ダブッキは現代イタリアを代表する作家です。
⑨「くじらだ」五味太郎 岩波書店(絵本)
大きな湖のある村で「くじらだー! 」の声。村はたちまち大さわぎに。くじらの大捜索が始りますが、なかなか見つかりません。そこで、空から見てみるとなんとびっくり!
五味太郎の70、80年代の作品のデザインを一新した「五味太郎クラシックス」の1冊となります。
きょうは何の日? ひとこと
「くじらの日」は日付の語呂合わせから制定された。鯨と日本人の共生を考える日。
鯨といえば、どうしても問題になるのが捕鯨です。
反捕鯨国の多くも、過去には捕鯨をしていました。欧米においては捕鯨の最大の目的は、食用としての鯨肉の確保でなく、鯨肉から採れる鯨油の採取にありました。
幕末の頃、アメリカでは鯨油獲得のための捕鯨が盛んでした。
かのペリー提督率いる黒船の目的のひとつに捕鯨も関連していたことは、あまり知られていません。
アメリカの目的は日本を開国させることにありました。
なぜ、開国させたかったのでしょうか。
日本と貿易することも目的ではありましたが、日本には欧米が欲するような資源はほとんどありません。
むしろ捕鯨船などの寄港地として必要だったといいます。
建国当初からアメリカは自国沿岸で捕鯨していたのですが、それでは不足していき18世紀には新たな資源を求めて太平洋全域へ活動を拡大していました。
アメリカ式の捕鯨は主に油を採取し肉等は殆ど捨てるという商業捕鯨であり、薪水を出先で補給しながら何年も母港に戻らず操業し続けたといいます。
19世紀初頭には日本周辺海域にまで進出していたのですが、日本は鎖国をしており捕鯨船は薪水の補給ができません。アメリカに戻っていては効率が悪いのです。
だからこそ日本を開国させて、その寄港地として利用したかったのです。
ということで「クジラ」をテーマに提案しました。
それでは、また次回。
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司書のビブリオ9です。
図書館で何の本を借りたらいいか、迷っているあなた。
そんなあなたにいろいろなテーマで本をご提案します。