10月23日 きょうは何の日?

電信電話の日



きょうの本棚

①「日本メディア史年表」 土屋礼子   吉川弘文館(070:ジャーナリズム)

 1837年の電信機の発明から2015年まで、メディアの歴史を総合的に扱ったはじめての年表。

②「グラハム・ベル空白の12日間の謎」 セス・シュルマン 日経BP社(289:個人伝記)

 電話の発明者をグラハム・ベルとする従来の電話特許史をくつがえす。新たに公開されたベルの研究ノートの2月25日から3月7日、12日間の空白に秘められた謎を追いかける。

③「電話交換手はなぜ「女の仕事」になったのか」 石井香江 ミネルヴァ書房(366:労働経済)

 電話交換が技術発展により、男性から女性の仕事へ変わっていく過程を日独比較から捉える。男と女の仕事の棲み分けを作り上げた社会の一側面を解き明かす。

④「情報通信技術はどのように発達してきたのか」 井上伸雄  ベレ出版(547:通信工学)

 腕木通信から光通信まで情報通信の歴史と最先端技術のしくみがわかる。

⑤「明治電信電話ものがたり」 松田裕之 日本経済評論社(694:電気通信)

「電線をつたって手紙が届く?」
 文明開化に沸く日本。元祖“IT革命”にとまどいながら、かれらはその益を我が物にしようと苦闘する。知られざる近代史のひとコマを描く。

⑥「インヴィジブル・ウェポン 電信と情報の世界史」 D.R.ヘッドリク 日本経済評論社(694:電気通信)

 電信の発明から第二次大戦が終了するまでの電気通信・無線通信をめぐる国際政治に関する歴史は「通信の中立」という理念が次第に形骸化していき、自国の利益のために検閲や通信の遮断をはじめるようになる過程であった。

⑦「電話交換手たちの太平洋戦争」 筒井健二 文藝春秋(913:日本文学・小説)

 大事な通信を守るため彼女たちは最後まで職場を離れなかった。けなげな交換手たちに焦点を当てた11編の短編小説集。

⑧「海底二万マイル」ジュール・ヴェルヌ ヤマハミュージックメディア(953:フランス文学・小説)

 1866年、世界中の海で、怪物の目撃があいついでいた。教授はその正体をあばくため助手とともに軍艦に乗り込む。それが、未知なる冒険のはじまりになるとも知らず。

  ジュール・ヴェルヌによるスリルとロマンあふれる名作の新訳版。主人公が海底で切断された大西洋横断電信ケーブルを発見する場面がある。

⑨「月夜のでんしんばしら」 宮沢賢治 作 竹内通雅 絵 三起商行(絵本)

 でんしんばしらが歩きだす。黄色い顔の電気総長がやってくる。恭一が遭遇した奇妙奇天烈不思議な夜。

きょうは何の日? コラム

「電信電話の日」

 1869年のこの日、横浜裁判所構内に電信機役所が設置され、東京・横浜間で公衆電信線の架設工事が始まりました。それを記念して電気通信省がこの日を電信電話の日に制定しました。電気通信省はのちの電電公社につながります。電電公社と聞いてある一定以上の年齢の方はすぐに何かわかったでしょうが、若い人にはなじみがないかもしれません。今のNTTのことです。ちなみにNTTの正式名称は日本電信電話株式会社です。

「電信」

 電信というのは大雑把に言えばモールス信号などによる通信のことです。有線無線は問わないようです。19世紀初めに実用化され海底ケーブルなどにより、またたくまに世界中にネットワークがひろがっていきました。

「海底ケーブル網の完成」

 大西洋横断ケーブル敷設を端緒にイギリスは国内すべての電信会社を国有化し、世界各地に次々と新しいケーブルを敷設していきました。1901年の時点で世界中にはりめぐらされた海底ケーブルの総距離はおよそ36万キロメートル。イギリスはそのうちの63%を占めていました。
 この力を背景に、イギリスは他国の重要な電報を盗聴したり、伝達を故意に遅らせたりするなど、外交に利用しました。たとえば、1899年のボーア戦争の時に、イギリスはフランスと南アフリカの電報をすべて検閲し、暗号化された電報は通信しないという対応をとったそうです。イギリスの覇権の裏には海軍力だけでなく情報の優位性もあったのです。情報の悪用にも思えますが、これは現在でも海底ケーブルの接続ポイントでの盗聴問題につながっています。一部の国では、その接続ポイントから盗聴をしているといわれています。

「大西洋横断ケーブル」

 1850年代には、地中海などでは、すでに海底ケーブルが何本もひかれていました。日本ではようやく黒船が来航し幕末が始まったころです。さすがに、この時点ではアメリカとヨーロッパの間には海底ケーブルはひかれていませんでした。両者の間には大西洋があり、それを結ぶにはおよそ3000kmのケーブルが必要であり、さらにケーブルは深さ3000mを超える深海を通さねばならなかったからです。それでも幾多の失敗の末に大西洋横断ケーブルは敷設されました。この大西洋横断ケーブルらしきものがジューヌベルヌの海底二万里には登場します。著者のヴェルヌは大西洋横断ケーブルやグレート・イースタン号(元客船、その大きさからケーブル敷設船となった)に興味を持っており、ケーブルが開通した時には、「地球上の人間と日常的に通話できるようになれば多くの誤解が解消するにちがいありません」といっていたそうです。

「電話」

 電話と言えば、携帯電話と固定電話です。この固定電話という言葉は携帯電話が登場してから両者を区別されるためにできた言葉です。この固定電話は昭和の中頃まではダイヤル式の黒電話が家庭用としては一般的でした。
 それよりはるか昔、最初の電話は一対一の固定回線だったようです。これでは糸電話のようなもので相手を選べません。
 続いて電話回線を相互に接続したり、接続を切り替える「交換業務」を人が行う電話が登場します。これにより希望の相手に電話ができるようになります。交換業務を行う人を「電話交換手」といいました。「電話局」には「交換台」が用意され、それを用いて電話同士を電気的に接続する方式です。たとえば「20番」が「35番と通話をしたい」と希望した場合、交換手は1本のケーブルを用意しその両端の端子を、交換台上で「20番」と書かれている穴および「35番」と書かれている穴に差し込むことで電話回線をつなげたのです。昭和初期などの映画やドラマなどで女性の交換手がいて、相手とやりとりしながら、ケーブルを差し込んでいた場面をみたことはありませんか。まさに、それが交換手の業務です。
 その後、通話先を音声で交換手に伝えるのではなく電話機のパルス発信で機械的に伝える方式が開発され、手作業でやっていた相互接続や繋ぎ換えの作業を自動で行う「電話交換機」が広がっていったのです。

 

それでは、また次回。
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ビブリオ9

司書のビブリオ9です。
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